農業に照らして、いろいろな視点から考えてみると


当然のことですが、いい圃場(土壌)にはいい作物が育ち、病気はありません。

そして、虫も付きにくく、美味しく、市場では希少な貴重品として高値で売れていきます。生産者も消費者もみんな笑顔になれます。

では、多くの農業の現場ではなぜ作物が病気になり、虫が付くのでしょうか?

そして、私たちが望む『滋養豊かな美味しい、お代わりしたくなるようなもの』がなぜ作れないのでしょうか?

人間や動物の健康は食べ物と腸の働きにかかっています。私たちの主食である植物(作物)にとって健康を左右するのは土です。いわゆる動物の腸に相当するのが土であり、その土に何(植物が必要とするもの)を入れるか、です。

一言で言いますと、病気や虫を寄せる原因、連作障害の原因は人間がつくっています。基本は子育てと同じで、「育てる」ものではなく「育つ」もの。親や大人は愛情をもって育つのを待ち、一歩引いて手助けする。「たくさん育てよう」とか「大きくしてやろう」とむやみな施肥が作物の生育を乱します。栄養(窒素)過多になると、茎も葉も実も軟らかく軟弱となり、気候変動(寒暖)にも耐えられなくなり、病気になり易く虫も付きます。となると、どうしても薬(農薬という毒)が必要になります。

また、「微生物を入れると有効」と聞くと土着菌ではない「よその微生物」を大量に入れ、酸性土には石灰を撒くといいと聞くと毎年大量に消石灰を入れたりします。微生物の間の淘汰や石灰などの影響で土壌は冷えて固くなり、段々作りづらくなり病気が蔓延り、虫も多くなります。すると、ここでも薬(農薬という毒)の出番です。このようにして、ますます土は冷たく固くなっていきます。

自然の循環から益々遠のいて、年々不味くて体(人や動物)に良くないものを作り続けることになります。作物も人も連作障害の輪の中に組み込まれてしまいます。

他にも、“隣が農薬散布したから”とか、“虫(害虫?)が出るかも知れない、出たら大変だから”という心理的なプレッシャーや種々のトラウマに負けて、効き目のない卵の状態や蛹の状態(孵化や羽化の時期を考えず)で強い農薬を大量に散布する。そんなことも重なり、土は益々やせ細って(地力低下)しまいます。

人間も動物も植物も同じ生き物です。食べ過ぎ(栄養過多)、薬の多用(薬も多いと毒)は、生命体が本来持っている生命力(免疫力、自然治癒能力、自己調整・活性能力、忌避能力)を低下させ、ウイルスや病原菌などに対する防御力が弱まり病気に罹患(りかん)し易くなります。

解り易い例として、人の場合、食べる物や食べる量によって起こる糖尿病や心臓病、痛風などがあります。植物の場合ですと、水や窒素を与え過ぎると、徒長という枝や茎が間延びして伸びる現象(結果)になります。徒長すると病気に罹りやすくなり、暑さ寒さにも弱くなります。稲は茎が弱くなり倒れやすくなります。

徒長の原因には、肥料(窒素)のやり過ぎの他に、日照不足や根や株間、芽の混み過ぎとそれによる風通しの悪さもありますが、とにかく、窒素過多は作物を不味くします。

人間社会にも田んぼや畑にもたくさんの病気がありますが、その殆どが食べ過ぎ(栄養過多)飲み過ぎ(水分過剰)が原因です。人間も動物も作物も与えればいくらでも食べ、いくらでも太り、軟弱となり病気を引き寄せ発症しています(遺伝子の問題)。病気になってから、いくらいい薬(農薬)を使っても健康にはなりません。

まして、殆どの場合、問題を解決するために薬を使うほどのことはありません。収量減(5%程度と謂われています)と農薬や化成肥料のコスト比較をして判断してみてください。

これからは私たち自身も、農という営みも、シックケアーからヘルスケアーへシフトする時です。